PMCで見つけた〈6〉ザ・サーチャーズの「マジック・ポーション」
2018年10月16日
二番煎じの特効薬No.309があった
前回のザ・クローヴァーズ「ラブ・ポーションNo.9」でも触れましたが、それまではザ・サーチャーズの「恋の特効薬(邦題)」がオリジナルだと思っていました。オリジナルのドゥ・ワップを、錬金術を使ってイギリス・ロックのマージー・ビートに変えたようでもありました。そこで改めて、PMCからサーチャーズのレコードを借りてきました。その中に「サウンズ・ライク・サーチャーズ」という12曲入りのアルバムがありました。昭和40年(1965)に制作されたものです。
歌詞カードを持たず、何気なく聴いているとA面3曲目に「マジック・ポーション」がありました。英語が聞き取れる訳ではありませんが、「マジック・ポーション・ナンバー・スリー・オー・ナイン」だけが耳に残りました。原題は「Magic Potion」でしたが、急いで歌詞カードを手にすると、中には「ラブ・ポーションNo.9」と同じく「マジック・ポーションNo.309」と番号が振られていたのです。クローヴァーズの曲をカバーしたのが1964年ですから翌年に、続編として作られています。
「No.9」ではモテない男が、だれかれ構わず恋に落ちたくて、ジプシーの占い女に薬を調合してもらい、自分で飲んだところ大失敗をしてしまう、という内容でした。「No.309」では、好きな彼女に振り向いてもらいたくて、やはりジプシーに、魔法の薬が欲しいと懇願するお話です。ただ、前回の失敗に懲りたのか、歌詞はお願いをする所までで終り、作ってもらえたのか、試したのか、効能はどうであったかまでは歌われていません。
結果がないだけ楽曲としてはインパクトに欠けますが、ヒットしたのかどうかは分かりません。何も知らなければメロディーも心地よく、サラリと聴けるマージー・ビートです。ただ、ドジョウの上には必ずしも柳の木が生えていると限らない、という例でしょうか。恋した彼女に振り向いてもらうためには新鮮な気持ちが必要でしょう。薬だけに「二番煎じ」は利かなかったのです。
◇KIT・PMCとは:金沢工業大学がライブラリー・センターに設置しているレコード・ライブラリー「ポピュラー・ミュージック・コレクション」の頭文字をとった略称。全て寄贈されたレコードで構成され、24万5千枚を所蔵している。