PMCで見つけた〈16〉ハンク・ウィリアムズの「カウ・ライジャ」
2018年11月20日
先住アメリカンの太鼓の響きが物語の幕を開ける
先日、久しぶりにクリント・イーストウッドが出演しているマカロニ・ウェスタンを観た。古い西部劇では正義の味方だった騎兵隊もなかなかの悪ぞろいだったりするようになった。敵役だったインディアンも主役級となって正義の味方に肩を並べるまでになり、呼び方も先住アメリカンに変わってきた。私達も戸惑いながらも新しい呼び名に慣れてきた。
ただ、古い西部劇の筋書きや、古いウェスタン・ソングの歌詞などは変えることができない。歴史的な作品としてとらえるしかないのが実情だ。その中の一つにハンク・ウィリアムズの「カウ・ライジャ」ある。曲の始まりは、先住アメリカンの太鼓の音がリズムを刻み、歌詞の出だしは「Kaw-liga was wooden Indian standing by the door.」で、思いっきり木彫りのインディアンとある。
物語は観光地の土産物店の前に飾られた木彫りのインディアン人形が、通りを挟んだ店の前に飾られた女性の木彫り人形に恋をした、というもの。もちろん、近寄ることも、話しかけることも、相手の返事を聞くこともできない。そのうち、観光客が来て、女性の方の人形を買っていった。カウ・ライジャはただ立ち尽くして古い松の木になってしまった。
悲しいカウ・ライジャのレコードはPMCに、カバーされた邦楽も含めて35件があった。売れ残った土産物も悲しいが、家に持ち帰ったのはいいが、押し入れの隅に押し込まれて忘れ去られるのも儚い運命である。我が家に多いのは安物の壺と、馬の民具と置物。北海道で求めた革製の馬のキーホルダーは20年以上も使っている。ただ、鮭をくわえた熊の置物は玄関にも何処にもない。(宮崎正倫)
◇KIT・PMCとは:金沢工業大学がライブラリー・センターに設置しているレコード・ライブラリー「ポピュラー・ミュージック・コレクション」の頭文字をとった略称。全て寄贈されたレコードで構成され、24万5千枚を所蔵している。