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PMCで見つけた〈19〉ディーン・マーティンの「ロバート・E・リーを待っている」

2018年11月30日

甘さ控えめ、ラグタイムに乗って軽快な歌声

 

ディーン・マーティンと言えば、酒に酔ったような甘い歌声で魅了する歌手だと思っていたが「ロバート・E・リーを待って」は少し趣を異にしていた。PMCで見つけたのは「SWINGIN’ DOWN YONDER」というアルバムだった。収録12曲は1920年代のヒット・ソングばかりらしいが、ディック・ステイビルのディキシー・キャッツの演奏で、1955年(昭和30)の録音である。

 

ディキシーランド・ジャズとは、ミシシッピー川の河口の町ニューオリンズで、南北戦争の後に放棄された軍楽隊の楽器が黒人たちの手に渡り、演奏が始められたジャズの原型である。バンジョーの音とコルネットやトロンボーン、バス、クラリネットが特徴的だ。が、バンドスタイルの演奏はあっても、バンド演奏で歌うスタイルは余り聞いたことがない。それだけ、このアルバムは新鮮な気分にさせてくれる。

 

「ロバート・E・リー」とはミシシッピー川を運行する船名だが、外輪船だったのだろう。曲の所々に汽笛を思わせる演奏が入ってくる。低音のバスが、聴く者を腹の底から揺さぶるような金管のラグタイムがなんとも心地よい。この船には誰が乗ってくるのだろう。川の堤まで、心を弾ませて出迎えるほどの人に違いないのだろう。

 

レコード収録をしたのはマーティンが38歳の時で、コメディ映画で大うけしたジェリー・ルイスとの“底抜けコンビ”を解消する2年前のことである。ソロ活動をするようになってからはジャズ歌手として、そしてポップスも歌いこなした。仲の良かったフランク・シナトラとは違って、肩の力を抜いて楽しそうに歌うジャズだった。テレビで見るしか方法がなかった頃だが、拝聴させていただく、という感じのアンディー・ウィリアムスより好きだった。

 ◇KITPMCとは:金沢工業大学がライブラリー・センターに設置しているレコード・ライブラリー「ポピュラー・ミュージック・コレクション」の頭文字をとった略称。全て寄贈されたレコードで構成され、245千枚を所蔵している。