PMCで見つけた〈34〉ザ・ブラザーズ・フォアの「遥かなるアラモ」
2019年2月1日
180年経った今も越境、入植民の問題は繰り返す
ザ・ブラザーズ・フォアが歌った「遥かなるアラモ」は1960年(昭和35)のアメリカ映画「アラモ」の主題歌です。この映画は、メキシコからのテキサス独立戦争(1863年2月23日~3月6日)13日間をテーマにした内容です。独立を目指すアメリカ側の軍人や義勇兵250人がアラモ砦(とりで)に立て籠もったのに対し、メキシコ軍1600人が攻め寄せて、最後には籠城軍を全滅させた、という実話が基になっています。
「遥かなるアラモ」の原題は「Green Leaves Of Summer」で、のどかな曲調は荒々しい戦いとは落差があります。歌詞は、ナマズが川面から跳びはね、松の木が目にまぶしい自然豊かな田舎の風景、恋人や夫婦の暮らしが歌われて、題名の通り、夏の青葉が若者に、故郷へ帰れと呼びかけています。
映画の中では、主役のジョン・ウェインが扮する義勇兵のデイビー・クロケットが、最後の戦いの前夜となる場面で、「何を考えている」と問われ、「思い出しているだけさ」と答える時にバックで流されているという。戦況から既に死を覚悟しながら、懐かしい故郷に思いを馳せていることを表しています。身を挺して国のために闘う愛国心を高揚させるような「アラモを忘れるな」という格言が残されているようです。
しかし、メキシコ側からみれば、勝手に国境を越えて入植してきたアメリカ側がテキサスを独立させようと画策しているように見え、領土を守るためにアラモ砦を鎮圧した正義の戦いになるでしょう。結局、現在はテキサス州としてアメリカに属する結果となっています。ところが現アメリカ大統領のトランプ氏は、メキシコ側からの不法移民を取り締まるために“壁”の建設に精力を傾けています。アラモ砦の攻防から約180年経った今も、問題は繰り返しているのでしょうか。(宮崎正倫)
◇KIT・PMCとは:金沢工業大学がライブラリー・センターに設置しているレコード・ライブラリー「ポピュラー・ミュージック・コレクション」の頭文字をとった略称。全て寄贈されたレコードで構成され、24万5千枚を所蔵している。