PMCで見つけた〈9〉ザ・キングストン・トリオの「ジョン・B 号の難破」
2018年10月26日
カリブ海の海賊と戦ったのか? 歌に実話の面影はないが…
今、FM-N1の音楽サーバーを聴き直している。ザ・キングストン・トリオのファイルを開いたところ、あったのは「トム・ドゥリー」と「花はどこへ行った」の2曲だけ。フォークソングは、他の歌手、グループもカバーしているため、放送するのには差し当たり支障はない、と言えるが早速、PMCからレコードを借りてきた。
中に懐かしい1曲が入っていた。「ジョン・B 号の難破」である。歌い出しが「We come on the Sloop John B」で、やけに「Sloop(スループ)」が、昔から耳に残っていた曲ではある。ライナー・ノーツを見て初めて、その意味が帆船のことである、と分かった。帆船と言えば、中国からイギリスまで紅茶を運ぶティークリッパーという快速艇を思い出す。有名なものでは「カティーサーク号」がある。が、ジョン・B号は戦闘用らしい。
もともとは、バハマ諸島の沖合で難破した帆船の悲劇の実話が現地で歌い継がれており、それを収集して楽曲に仕上げたもの、という。バハマ諸島はカリブ海に浮かび、カリブの海賊がハバを利かしていた海である。もしかして、海賊の取り締まりに当たっていた帆船だったのか。しかし採譜はしたものの、歌詞の方は実話とは無縁の内容となっている。
歌詞カードをみると、祖父と私が船に乗り込み、酒をガブ飲みしたり、酔っぱらいが暴れたり、料理人が私の食べ物を海へ投げ込んだり、とイザコザを起こしている。海の男の威厳は微塵も見られない。海の荒くれ男も悪くないが、帆船のイメージを一新するなら10月28日に、富山県射水市の海王丸パークにでも出掛けるのはどうか。“海の貴婦人”と称される海王丸が今年(平成30年)最後の総帆展帆(そうはん・てんぱん)を披露してくれるそうだ。(宮崎正倫)
◇KIT・PMCとは:金沢工業大学がライブラリー・センターに設置しているレコード・ライブラリー「ポピュラー・ミュージック・コレクション」の頭文字をとった略称。全て寄贈されたレコードで構成され、24万5千枚を所蔵している。