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PMCで見つけた〈45〉ピーター、ポール&マリーの「悲惨な戦争」

2019年3月12日

時代の感性が“反戦歌”に味付けしてしまった

 

北朝鮮の非核化問題を話し合う米朝首脳会談が、2月末、ヴェトナムのハノイで開催された。協議は決裂して、合意文書はまとめられなかった。それでも両者は、それぞれの正当性を主張する解釈をしながら、今回の決裂を一つの事実、通過点として今後も協議を継続することになるのだろう。そこに、解決しなければならない問題が横たわっている現実は避けようがないからです。

 

会談場所がハノイであったが昔、アメリカと北ヴェトナムが戦争をしたことを思えば、過去の歴史は新しい歴史に向かって進んでいることに感慨を覚える。当時、盛んに反戦歌として歌われた「悲惨な戦争(The Cruel War)」を思い出す。まだ高校生の頃で、反戦や戦争とは無関係に、ピーター、ポール&マリー(PPM)の曲を覚えようとしていた。哀愁を帯びた曲調は、それだけで日本人の心の襞をくすぐるからです。PMCには30枚のレコードがありました。

 

「悲惨な戦争」はアメリカのトラディショナル・フォークソングで、原曲に「The」の定冠詞が付いているから、具体的な戦争を指しているはずなのです。曲が出来た時期から言えば南北戦争、イギリスからの独立戦争が挙げられるのでしょう。しかし、それはヴェトナム戦争ではありません。恋人のジョニーが兵隊に行くことを悲しむ女性の歌です。男装をしてでも付いて行き、一緒に居たいと願う内容です。

 

国の独立を維持するために戦う中で生まれる悲しみを肯定するわけではありませんが、否定も出来ません。感情とは別次元の問題なのです。一緒に悲しみを癒していくしか途はないのでしょう。国内では、時代の感性が味付けをして、侵略戦争の色に染められていったのですが、実際はヴェトナムの植民地支配からの独立戦争ではなかったのでしょうか。原曲が持つ素顔に触れながら、米朝協議の新展開を見守りたい、そんな気がします。(宮崎正倫)

 

KITPMCとは:金沢工業大学がライブラリー・センターに設置しているレコード・ライブラリー「ポピュラー・ミュージック・コレクション」の頭文字をとった略称。全て寄贈されたレコードで構成され、245千枚を所蔵している。